DOCTOR'S VOICES
海外の専門医とディスカッションしながら、重症下肢虚血の手術を行う
仲間 達也 氏
東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科 副部長
2018年、東京ベイ・浦安市川医療センターに入職し、末梢血管インターベンション(EVT)のうち、特に重症下肢虚血の診療に精力的に取り組む。同年12月、鈴木健之先生(東京都済生会中央病院)、宇都宮誠先生(東邦大学医療センター大橋病院)と共に、世界初の医師主導の末梢血管治療のWebライブコース(研究会)であるTECC(Tokyo Endovascular Challenging Conference)を立ち上げ、末梢血管治療の知識や技術を、Webライブを通じて世界に発信し続けている。
記事公開日:2020年3月6日
最終更新日:2023年11月20日
手術ライブは「医学の発展のためになる」ことが大切
初めて手術者(オペレーター)として参加したのは、2012年のQJET (九州Joint endovascular therapeutics)で、そこでは膝下動脈の閉塞病変の治療を担当しました。難しい症例でしたが、なんとか手技を成功させることができ、その時の達成感は今でも鮮明に覚えています。その後も(2020年)現在まで、全国各地の手術ライブ研究会でオペレーターとして参加しています。その中で、常々「手術ライブ」の持つ意味について考えてきました。
手術ライブの症例患者さんは「医学の発展のため」や「医師の教育のため」にライブ治療に同意し、協力くださっています。手術ライブに同意していただいたからには、その厚意に報いる必要があります。すなわち、患者さんが「医学の発展のため」という志に同意していただいた以上、手術ライブを見ている医師たちにも、何らかの「メッセージ」を伝えることが必要だと考えています。この「伝えるべきメッセージ」をどのように伝えていくかを突き詰めていかなければ、ライブ治療の存続は難しいと感じています。
リアルな治療を学ぶ場、医師主導のWebライブコースの立ち上げ
カテーテル治療を学ぶには、誰かの手技を見て学ぶという過程が必要不可欠です。その学びの場として、①会場をもつライブコースへの参加、②各病院で行われる小規模のワークショップへの参加があります。Face to Faceの研究会の良さは、Webの画面を通してでは伝えられない情報を得られる点ですが、どちらにも共通するデメリットは、「その場に出向かなければ学ぶことができない」という点です。実際、最も学びの場を欲しているはずの若手医師は、日々の臨床業務に追われており、そうしたオフラインの場に参加する機会を持つことすらできません。これを解決するため、時間的・空間的限界を持たずに発信できる「Web」という手段に可能性を見いだしました。従来の会場を必要とするライブコースはどうしても巨額な予算が必要であり、小規模のワークショップはスポンサー企業の意向に左右されるため、実際の現場での「リアル」な治療の選択を伝えるのに不向きです。一方、Webライブは規模にもよりますが費用も10分の1以下で、多くの医師にリアルな情報を提供することができます。
Webライブを通じて適切なEVT手技・知識の教育・啓発をしていきたいという強い想いから、志を同じとする鈴木先生と、宇都宮先生と力を合わせ、世界初の医師主導のWebライブコースであるTECC(Tokyo Endovascular Challenging Conference)を立ち上げました。
e-casebook LIVEで海外Webコメンテーターを交えての症例検討が可能に
2018年12月に第1回のTECCを開催しました。その際の反省点として、Webコメンテーターの音声が一部途絶えたことや、Webコメンテーター側に配信された画像のクオリティが不十分だったことが挙げられ、改善が必要であるとの意見が出ました。
そんな中、2019年1月に台湾で開催されたTTT(Taiwan Transcatheter Therapeutics)でオペレーターを務めた際に、その模様がe-casebook LIVEで世界に配信され、多くの方々から反響をいただきました。その時に「e-casebook LIVEでTECCを配信すれば、ハイクオリティのライブを日本だけでなく、世界中に届けられる」と確信しました。
実現したのが、2019年12月に開催したTECC2019 のe-casebook LIVEでの配信です。今回の新しい挑戦は、海外からのWebコメンテーターを参加させてのライブ配信でした。TECC2019の4症例目を「International Session」とし、台湾、香港、ベルギーの3人の医師にコメンテーターとして招き、海外医師向けに英語で配信しました。中継のラグが発生しないか、聞き取るに耐えうる音声が届けられるのか、そして挑戦尽くしの環境で海外ゲストが観て納得する手技ができるかどうかなど、多くのプレッシャーがありました。しかし、中継が始まり、ベルギーの先生の声がはっきりと聞こえた瞬間、「このライブは間違いなく成功する。私たちの考えていたコンセプトは正しかった」と確信に変わりました。
最終的に500人以上の方に視聴いただき、開催中には約500件の質問やコメントが寄せられ、活発な議論ができました。多くの方から非常にポジティブな評価を頂き、「ライブ治療の歴史が変わった日になるかもしれない」というコメントも頂きました。海外から視聴した医師からも大変好評でした。
Web研究会をもっと世界に浸透させたい
5Gを利用した配信が可能になることで、コメンテーターとのバーチャルな距離感がさらに近くなると思います。海外向けの情報発信を強化することで、アジアを含めて世界における日本の存在感を高めることができると思います。今後もe-casebook LIVEを使って「Web研究会」という新たな世界を切り開いていきたいです。