CASE #07e-casebook LIVE|オンラインで手技のスキルアップ

若手医師の日常臨床の悩みをライブワークショップで解決

上原 裕規

浦添総合病院 循環器内科 主任部長

2019年9月にe-casebook LIVEで「浦添総合病院ワークショップ」を立ち上げた上原氏。以前から病院内でのワークショップを年間30件あまり実施し、沖縄周辺の病院のみならず、全国の病院の若手医師も受け入れるなど、熱心に後継専門医の教育に励んできた。
若手医師目線のディスカッションを行うことで、日々の臨床現場で役立つ治療法を伝授したいと上原氏は話す。

記事公開日:2019年10月21日
最終更新日:2023年11月20日

病病連携で若手医師のスキル向上

私も沖縄県内で上の世代になり、指導する立場にあることから、病病連携で若手医師とのつながりを持ち、ワークショップなどの情報発信を通じて若手医師の教育に力を入れています。病病連携を推進することで、いろいろな症例に関わる医師を招聘し、沖縄県内では見られない治療器具を使用した治療や最先端の技術を見て学ぶ機会が生まれます。その場に若手医師を招くことで最新の取り組みを周知できるいい機会となるだけでなく、症例の相談もでき知識を深めることもできます。結果、今年(2019年)は昨年に比べて症例の紹介が100例ほど増えました。

ベテランスタッフにとってもワークショップはメリットになります。スペシャリストの医師など多くの医師の目に触れることで、治療の偏在を防ぐことができるからです。ベテランであるが故に、独りよがりな治療に陥ることがあるためワークショップは自身の手技を見直すいいきっかけを与えてくれます。

e-casebook LIVEを始めたきっかけ

e-casebook LIVEでワークショップをライブ配信し始めたのは、浦添総合病院内にライブ配信システムがあることを知っておられた土金悦夫先生(豊橋ハートセンター)の発案によるものです。全国でライブ配信機能を備えた病院は稀であり、当院がライブ配信会場に適していると打診をいただきました。e-casebook自体は日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)などの学会の手術ライブ配信で知っていました。当院の取り組みと近いことを行っているe-casebook LIVEには親近感がありましたし、当院も院内でのライブ配信に慣れていたため、躊躇なく始めることができました。このライブ配信が若手医師の学習コンテンツとなり、病院スタッフのスキルアップにもつながります。さまざまなメリットがあり、この提案を受け入れることにしました。

日常臨床の模擬体験を全国の若手医師に

実際、ライブ配信をすることで、全国の若手医師の実臨床に役立つ形でコンテンツの提供ができたと思います。スーパースターのような「マスター」と呼ばれる医師が行う「自分にはできないけど凄いな」と思う高度な手術ライブもありますが、この手技を実施できる医師は10年や20年の経験を積んだ一部の専門医で、専門医全体の10%程度です。残りの90%の医師は日常的に起こる複雑な心血管のカテーテル治療(Complex PCI)をどう治療するかについて日々悩みながら研鑽しています。若手医師は、主に日常臨床での悩みの解決方法について一番学びたいと考えているでしょう。

そのため、当院のライブ配信では若手医師がオペレーターとなり、視聴者の医師が自分のことのように体感してもらえる設定を心がけています。この模擬体験ができるのがライブ配信の利点だと考えています。e-casebook LIVEの視聴者層が30〜40代の若手医師が多く、そういう方向けの垣根のないディスカッションの場が実現しつつあると実感しています。

地域コミュニティとしてのe-casebookに期待

e-casebookは、医用画像が容易にアップロードでき、サクサクと閲覧できるので非常に優れたシステムだと思います。できればより気軽な症例相談などもできるように、地域の医師のコミュニティツールとして地区ごとに強化し、ディスカッションが盛んに行われるのが理想です。e-casebookは地域を絞ったコミュニティをしっかり作っていけるツールだと思っています。高名な医師が情報発信する全国的なグループでは、若手医師が意見を述べることが難しいことがあります。普段は若手医師だけのコミュニティで、時折経験豊かなベテランの医師が参加してコメントする程度が適切だと思います。

 

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これからのe-casebook LIVEに期待

今回のライブ配信で初めてアンケートを導入しましたが、視聴者の医師の率直な意見を即座に収集でき、非常に有用だと感じました。このような双方向のコミュニケーションを可能にする機能の充実が進むことを望みます。別施設の医師をインターネットでつないで、各地からコメンテーターとして画面上で参加できる仕組みもできると面白いと思います。

コンテンツの内容も、心血管である冠動脈の分岐部病変や冠動脈の慢性完全閉塞(CTO)などと細かくカテゴライズし、教育ツールとして最新の治療情報を提供してほしいです。先日、木下順久先生(豊橋ハートセンター)のライブ配信を拝見し、従来の教科書にも書かれていない、当院では手がけたことのない手技が紹介され、初級から上級までの医師にとって非常に勉強になる興味深い内容でした。今後もトップオペレーターの医師から、日常臨床に役立つ手技を配信してもらうことを期待しています。