CASE #22e-casebook FORUM, e-casebook LIVE|全国の医師とのつながりの場

現場にいながら最新医学のインプットからディスカッション。e-casebookで築く新たな医師ネットワーク

中潟 寛

仙台市立病院 循環器内科医長

若手医師が最新の医学知識や手技を学ぶためには、学術論文の精読に加えて学会や研究会への参加が一般的だが、受け持ち患者の状態や勤務状況によっては現地参加が移動の負担から難しい場合がある。e-casebookには、世界中の専門医から学べるライブ研究会プラットフォーム「e-casebook LIVE(イーケースブック・ライブ)」と、ディスカッションプラットフォーム「e-casebook FORUM(イーケースブック・フォーラム)」がある。冠動脈インターベンション(PCI)を専門とする中潟氏は、これらのサービスを利用して日々の学習に取り組んでおり、全国のエキスパートや同世代の医師とのつながりの場としても活用している。

記事公開日:2024年10月21日

オンライン配信で広がる学びの機会

従来、最新の医学知識を得たり、治療手技を学んだりするためには、学術論文からだけでなく、研究会や学会に直接参加することが一般的でした。私は仙台に勤務しているため、都市部で開催される研究会への参加は受け持ち患者の状態や勤務状況によって、移動の負担が大きく容易ではありませんでした。その点、e-casebookのようなオンラインで参加できる環境が整ったことで、医局や自宅にいながらより多くの研究会や講演会に参加ができ、知識を効率よくアップデートできるようになり、非常に助かっています。

e-casebookを初めて知ったのは、前職の病院でe-casebookチームの方とお会いした時でした。2020年当時、循環器内科医向けのプラットフォームは少なく、循環器内科領域に特化したライブ配信や症例検討サービスを提供しているe-casebookについて話を聞き、興味を持って登録しました。現在ではe-casebook LIVEのコンテンツは豊富ですが、当時はコンテンツが少ない中でも特に「PCIが上手くなる講座」をよく視聴していました。コロナ以降、多くの循環器領域の学会や研究会がWeb配信を取り入れe-casebook LIVEも広く使われようになりました。現在では、学会・研究会ライブ、e-casebookオリジナルライブ、企業ライブなど、さまざまなコンテンツが提供されています。e-casebookは一度ログインすれば多くの情報にアクセスできる信頼性のあるプラットフォームとして、頻繁に利用しています。

PCI治療におけるライブ配信の活用と学び

現在、私はPCI治療における複雑病変であるCTO(慢性完全閉塞)、石灰化病変、分岐部病変(Bifurcation)、および合併症を中心に学んでおり、これらのテーマに関するライブ配信を視聴しています。特に印象に残っているライブ配信は「e-caselive CTO PCI salon vol.1」です。この研究会は2日間にわたって開催され、1日目は事前ディスカッションがWebでライブ配信され、2日目は現地会場とWeb配信のハイブリッド形式で行われました。私は現地会場に参加しましたが、コロナ禍が明けたばかりで、これまでWeb上でしか会ったことがない同世代の医師たちと現地で初めて顔を合わせ、ディスカッションできたことは非常に新鮮な体験でした。この「Webで始まり現地でも集まれるライブ」という新しい形式は、学びだけでなく新たな出会いの場にもなり、大変有意義でした。

また、最近視聴して面白いと感じたライブ配信は、「伝える・伝わるプレゼンテーションを学ぶ」です。発表の仕方、や論文作成、データ解析、統計に関する内容は、他の動画サイトでもあまり視聴する機会がないため、非常に貴重でした。なかなか独学で学ぶことが難しいこともあり、こうしたアカデミックなコンテンツが今後も提供されると非常に助かります。

リアルタイムで直接質問、見逃し配信でキャッチアップ

ライブ配信をリアルタイムで視聴するメリットの一つは、座長や演者にその場で質問ができる点です。e-casebook LIVEでは疑問点をリアルタイムで視聴しながらその場で気軽に質問でき、振り返ることも容易です。日常業務や急患対応でリアルタイムで視聴ができない場合でも、見逃し配信で視聴可能な点は非常に助かっています。その場で質問ができなかった場合でも、後日直接お会いした際に質問できたり、参加していた先生との会話に参加しやすくなるなど、優れた機能だと感じています。

フォーラムで全国の医師と実症例ベースのディスカッション

e-casebookを使い始めた当初から、e-casebook FORUMも頻繁に利用しています。「Sumitsuji Forum -PCI based on physics and mechanics-」をよく見ていましたし、最近ではPCI領域の研究会主催の症例検討ページを見ています。また、ある病院の現地ワークショップに参加した際に、指導医の先生に「何か困ったことがあればフォーラムで連絡してください」と言っていただきました。治療方針に悩んでいる症例をアップロードすると、毎回丁寧にアドバイスをいただいており、遠く離れていてもエキスパートの先生に相談ができ大変感謝しています。一度お会いしたことのあるエキスパートの先生とオンラインでつながり、実症例を通じて本当に知りたいことを共有できるのは非常に有益です。

また、e-casebook FORUMの機能面では、国際標準規格の医療用データ様式であるDICOM(ダイコム)をそのままアップロードすれば、個人情報が自動で削除され、全員がe-casebook上のビューワーを使って閲覧できるため非常に便利です。以前は、個人情報を伏せた上でパソコンに流れる動画を撮影して情報共有をしていましたが、画像が粗いため議論ができませんでした。e-casebook FORUMでは、DICOMシリーズのコマを指定して所見をコメントができて重宝しています。このような形で症例データやディスカッション内容を記録しておくことは個人の振り返りにも活かせるのみならず、他施設の症例を共有できる点でも非常に有用と感じています。

e-casebookは医師とのつながりの場

e-casebook FORUMのようなサービスがない時代は、症例共有のために直接集まるしか方法がなかったと、私の先輩医師から聞きました。例えば、関東の医師たちは東京の喫茶店に集まり、症例を持ち寄ってパソコン画面を見せ合いながら、閉店までディスカッションを行っていたそうです。地域の医師を含めて日常診療の中で他施設の医師と気軽に集まる機会を作ることは難しいのが現状です。その点、e-casebook FORUMでは全国のエキスパートの先生や同世代の先生と気軽に症例相談ができるというのは、今の時代だからこその利点であり、今後もこのサービスを積極的に活用していきたいと考えています。

e-casebook LIVEでは、地域で代々受け継がれてきた治療法にとどまらず、全国の医師や、それこそ世界の医師による最新の治療方法を瞬時で知ることができるため、大変便利です。私は、新しい先生との出会いや、同世代のみならず同じ領域で活躍する全国の先生とのつながりを大切にしたいと考えており、e-casebookがそのようなきっかけの場となることを期待しています。