本当に必要としている患者に、最適な医療が届く世界を。
20代で訪れたとある国で、初めて「貧困国」の存在を目の当たりにしました。空港からホテルまでのタクシーでは、信号で車が止まるたびに、大勢の物乞いの子供たちが一斉にタクシーに群がってくる。そういった光景を目の当たりにして、怖いと感じるのと同時に、これが世界の現実なのだと思ったことを今でも昨日のことのように思い出します。
後に、製薬会社のマーケティングでの仕事を通じて、「資本主義における医療の限界」があることを何度も実感しました。市場性のない薬は、医薬品としてのニーズがあったとしても開発に至ることはほとんどないのです。当時のとある国のような、発展途上国特有の病気(黒熱病やマラリアなど)で、薬があれば死なずに済む命も、救われないことがある。社会や医療産業の課題について考えはじめたのはその頃です。また、同じような理由から、医薬品や、医療機器を使わない病気の治療方法や、医療技術それ自体も、広く必要な医師に伝えるすべがないために、本当に必要としている患者に届かない、ということもあります。貧富、地域、様々なところに医療の格差があるということを認識しています。
そこで、私たちは医師の技術や知見が医療産業の力だけに頼らず、医師自らの発信でもっと早く伝わるように、現在2つのサービスを展開しています。医師が世界中の専門医から学べる仕組み(専門医支援プラットフォーム e-casebook)、臨床現場で必要な相談を遠隔の専門医にできる仕組み(遠隔医療支援システム Caseline)を提供することで、医師が世界中の専門医と協力をして治療ができる世界を作りたいと思っています。
医療に、市場メカニズムが機能しない課題があるのであれば、ICTの力で補完したい。
それが私たちの挑戦です。